隅家

本とか音楽とか

2022-01-01から1年間の記事一覧

Neil Young『After the Gold Rush』

いくつか記事を書いたが、おそらく僕の記事に最も多く登場した名前がニール・ヤングだと思う。名を出した回数は間違いなく好意の量に正比例しているはずだが、実を言うとニール・ヤングについて僕はそれほど詳しくはない。どんな生涯を送ったかは勿論知らな…

遠藤周作 『海と毒薬』『留学』『沈黙』

初めて読んだ遠藤周作の作品が『沈黙』だった。『海と毒薬』を最初に読むべきだったと反省している。というのも、『海と毒薬』は私の中で『沈黙』に対する一つの解答編の形を成していたからである。 自分が読んだ『海と毒薬』の解説には、この作品と『留学』…

リルケ 『マルテの手記』

とっくの昔に死んだ作家の本を読むことが多い。これは完全な偏見だが、時の洗練を受けてなお残ってきた文学というものには、まさにそのことのゆえに、一定の価値が備わっているように思うからだ。現代作家に明るくない人間を果たして読書家と呼べるのかはさ…

ヒトリエ

あんまり寝れなかったものだから夜中の3時にウォークマンの電源を入れて音楽を聴いていたらいつの間にか朝7時になっていた。はじめは最近購入したIndigo la EndのアルバムとCrosby, Stills & NashのGreatest Hits(こちらは先週発見したレコードショップで見…

The Beatles 『Rubber Soul』

以前友人と音楽の話で盛り上がったことがある。当時電車を数時間乗り継いで大学まで通っていたその友人は、すでに3年が経過していた毎日の登下校の時間全てを音の摂取に捧げていたらしい。国内外を問わず多様なアーティストの曲を聴き込み、音楽専用機と化し…

安部公房 『砂の女』

友人からの強い勧めがあってつい最近、安部公房の『砂の女』を読んだ。人から物を勧められるということがどうにも苦手な性分なのだが、こと本に関しては普段は締め切られている窓にも僅かな隙間が生まれるらしい。物語そのものへの興味というよりは、それを…

Bill Evans 『Waltz for Debby』

いっとき、目的もなくふらふらとCDショップをぶらつくのが習慣だった。目印に設けられたジャンルの区分だけを頼りにこちらを向いたCDジャケットや特集、そこに添えられた店員さんのひとことを眺めていると、全く知らないアーティストのCDでさえ、不朽の名盤…

ヘルマン・ヘッセ 『車輪の下』

初めて読んだヘッセの作品が『車輪の下』だった。ふらりと出かけた古本市でよく聞くタイトルだと目を留めてみると100円の札がつけられていたのだった。たかだか100円で丸一日名作の世界に浸れるのだから本というのは何ともコスパが良い。繰り返し読むことも…

Crosby, Stills, Nash &Young 『Déjà vu』

ふとしたきっかけでCrosby, Stills, Nash &Youngの『Our House』を聴いた。前に僕の知人が「音楽を聴いているとき神の存在を認めざるを得ない瞬間がある」と言っていたが、僕にとって『Our House』はまさに神様に触れる一曲だったらしい。 別日タワーレコー…

カミュ『異邦人』

初めて読んだカミュの作品が『異邦人』だった。あらすじを読んだ段階では気狂いじみた人間が主人公の風変わりな話で、フィクション、娯楽として完成された読み物なのだろうと勝手に考えていた。ところがいざ読んでみると遠い世界の話のようで中々共感をそそ…

夏目漱石『こころ』

最近になって漸く『こころ』を真剣に読んだ。漱石と言えば真っ先に名前の浮かぶ文豪の一人で、とりわけ『こころ』や『坊っちゃん』は現代文の教科書に一部抜粋が載せられる程だから知らぬ人は少ないだろう。これは漱石に限った話ではないが、思うに、文学に…